▼映画的な表現の確立フランスのリュミエール兄弟は、シネマトグラフとよばれる方式に映画の有料の上映会を1895年からはじめ、興行的な成功をおさめています。2年後の1897年には、日本でも「フランスから到来した最新発明品」として興業が行われ話題をよんだものの、長続きはしませんでした。このシネマトグラフがどんなものだったかは、「リュミエール動画の衝撃から100年」で知ることができます。
しかし、CINEMA HISTORY---Films from the Silent Era に書かれているように、リュミエール兄弟のシネマトグラフは映画のハードウェア面での基礎をつくりましたが、映画的な表現の誕生ということになると、1915年のグリフィスの「国民の創生」まで20年間の時間がかかりました。映画的な表現の発見の過程で何が必要だったかを理解するのは、その後につくれらた映画を当然のように見て育ってきた私たちにとっては、かえって難しくなっています。
動画の技術は、出来事をありのままに記録できる所がすぐれていると当初考えられていました。しかし、フィルムの編集の効果を知るとともに、映画はフィルムの結びつけ方しだいで、写されたこととはまるで違ったリアリティを生み出せることがわかってきます。「国民の創生」に至る過程でグリフィスが見いだしたのは、こうしたフィルムの編集によるストリーテリングなのです。エイゼンシュタインは、フィルム編集の考え方をモンタージュ理論として提示しましたが、この方法は1925年の「戦艦ポチョムキン」でもっとも成果をあげています。(モンタージュについては、小林祐子さんの具体的なレポートがあります。)
こうした映画的な表現が見いださせるとともに、映画の大衆的な娯楽産業として可能性、芸術的な表現の可能性、その両方の見通しが大きく開けてきたのです。そして、1920年代のアメリカでは、ハリウッドの映画産業が大きな成長をとげ、大衆消費文化のひとつの柱となっていきます。
▼モダンアートの形成-----写実性と異なるリアリティの探究
絵画においても、19世紀末から20世紀初頭にかけてそれまでの枠組みの解体が起き、第1次大戦〜20年代にさまざまな斬新な美術運動の形で創造的なエネルギーが爆発的に発揮され、20世紀的な表現がつくり出されます。
大づかみに言えば19世紀の絵画は目に見えたものを描く「写実主義」だったのですが、「写実主義」は「印象派」によってピークを迎え、1980年代半ばからのセザンヌの徹底的な探究を通じて「写実主義」とちがった新たなリアリティを追究する動きが生まれてきます。
1905年前後のマティスをはじめとする「フォービズム」の時期を経て、ピカソ等の「キュビズム」、ダリ、マグリット、デルボー、ミロ等の「シュルレアリスム」、クレー、カンディンスキー等の「抽象絵画」といった前衛的な絵画運動が、1910年〜20年代に華々しく展開します。
これらの流れは、それぞれ異なる理念をもっていましたが、視覚の構成要素を解体し、それらを再構成し、「写実主義」とはちがったリアリティをつくりだす方法を見いだそうとする点は共通していました。つまり、確固としたひとつのリアリティがあるという信仰が崩れ、それとは違ったさまざまなリアリティが追究されるようになっている点に20世紀的な表現の特徴があるのでしょう。これは、19世紀末からの急激な技術発展によって都市生活の変化のテンポが速くなり、都市生活者のアイデンティティも不安定になったことと対応していると思われます。
また、20世紀的な絵画表現と映画的な表現の間には、大事な共通点があるといえそうです。
両方とも、構成要素を分解し再構成する仕方によって、見たままのことを再現しようとした時とは違ったリアリティが生みだされる点が鍵になっているからです。
▼21世紀的なものの形成に向かって
以上でたどって見たように、19世紀末から20世紀初頭に20世紀的なものが各分野で発芽し、第1次大戦から1920年代にかけて、それぞれが華々しく開花しています。この間の時期が、急速な変化の時代であり、創造的なエネルギーが激しく噴出した時代であると言えます。日本でもこの時期に、大正デモクラシーと呼ばれた明るい時代を経験しています。
しかし、1929年に始まる世界大恐慌によって、20年代のアメリカを中心とした繁栄は崩壊し、世界は大量失業とデフレーションに脅かされます。その下でナチスをはじめとするファシズムが台頭し、第2次大戦へと突入していきます。
第2次大戦後の時代は、東西の冷戦の恐怖の均衡と、大恐慌の教訓に学んだIMF-GATT体制によって世界戦争や大きな経済的な破綻が避けられ、各国の経済成長が維持されました。しかし、どちらかと言うとこの時期は、20年代まで達成された創造的な成果をもとにした、量的な拡大の時代という性格が強いと言えるでしょう。
そして、1989年のベルリンの壁の崩壊とともに、世界は再び大きな地殻変動の時期に向かいはじめているようです。21世紀的なものを形づくる地殻変動がどのような性格のものなのか、まだ判断は難しいですが、変化の方向を考えるためのいくつかの基本軸は明かになりつつあります。
ひとつは、インターネットに代表されるコンピータ・ネットワークの浸透。もうひとつは、地球的な環境問題の深刻化にともなう技術開発の方向の転換。さらには、経済や文化のボーダーレス化です。
皆さんは、21世紀はどういう時代になると思われますか。
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